いけばなは“算数”──春休みの文化体験で育つ観察力とイメージ力の関係性

華道家 假屋崎省吾先生に学ぶ「美の構造」

春休みの文化体験として、いけばなの体験会を行いました。今回取り組んだのは、草月流の「基本立身型 盛花」。
剣山を使い、枝や花の長さと角度を規定どおりに決めていくものです。

私は、テレビ番組の芸能人格付け『プレバト!!』でも広く知られている、華道家の假屋崎省吾先生に師事していました。
その中で学んだことのひとつは、美しさの裏には、理屈と構造があるということです。

いけばなは“算数”でできている

いけばなというと、「きれいに花を生けるもの」と思われがちですが、本質はそれだけではなく、型を正確に作ることが大切です。

まず、花材のうち核にする真・副・控(しん・そえ・ひかえ)の3本の長さを決めます。
そして、それぞれをどの角度で挿すか、どの位置に配置するかを、全体の比率とバランスを見ながら整えていきます。

いけばな体験で分度器を使い角度を測る子ども(算数的思考を育てる教室)

実際に行っていることは、まさに算数で、
・花材の長さ
 花器の大きさをもとに、花材の長さを決めます。
 その際には、たし算・かけ算・分数といった計算を使います。(1.5〜2倍、4分の3など)
・剣山に挿すときの角度
 分度器をイメージして、花材を挿す角度を正確に決めます。(10〜15°、45°、75°など)
・位置、バランス
 正三角形、不等辺三角形を意識します。

春・夏・冬休みなどの体験会では、保護者の方も一緒に参加可能です。
その中で、テキストをご覧になりながら「算数みたいなんですね!」という声もありました。
また、「いけばなという貴重な体験をしながら、まだ学校で習っていない分数や角度にも触れることができて、とても実りのある時間でした」というご感想もいただきました。

こうして、長さ・角度・位置関係を整えながら、全体を組み立てていきます。ここには、算数的な思考がそのまま使われています。そして、その3本の型ができた上で、全体のバランスや、何を表現するかを自分で考え、従枝(じゅうし/空間をつなぐ枝や花)を入れて奥行きや立体感、余白を表現していきます。

この段階で初めて、一人ひとりの個性やセンスが現れます。同じ型から始めても、仕上がりはすべて違う。そして、その違いこそに価値があります。ここには、「正解は一つではない」という学びがあります。

しかしそれは、何をしてもよいという意味ではありません。型を理解し、真・副・控の3本の構造を正しく作った上で、初めて“自由”が成立します。
つまり、基礎のない自由は自己流に過ぎず、この場合、理解の上に生まれた違いこそが、個性です。

見えない完成形を「先に描く」イメージ力

つまり子どもたちは、見えない完成形を先に頭の中に描き、そこに近づけているのです。
ここで必要になるのが、観察力です。枝の向き、花の開き方、重さ、広がり。ほんの少しの違いが、全体の印象を大きく変えます。
一歩引いて、よく見て、改善点に気づき、修正する。

これは、そろばんの暗算も同じです。見えていない珠を、頭の中に描き、組み立て、形にする。共通しているのは、“見えないものをイメージし、構造として再現する力”です。

AIは多くのことを教えてくれますが、こうした力は、実際に手を動かしながら自分の中で育っていくものです。
文化体験を単なる体験で終わらせず、思考の訓練として設計しています。春休みのいけばな体験を通して、子どもたちは、美しさの裏にある「算数」と「観察」と「思考」を、自然に学んでいきます。

きれいだけでない──いけばな体験の本質

学びとは、机の上だけにあるものではなく、いけばなを通しても、静かに、しかし確実に、子どもたちの中に積み上がっていきます。

算数は、日常から切り離された知識ではなく、あらゆる物事とつながりの中で成り立っています。

当アカデミーでは、そうしたつながりを授業に組み込んで設計し、体験していくことで、子どもたちの理解をより深め、学びを確かなものに育てていきます。

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